養殖セボシタビラのヤフーオークション出品全文

タイトルにございますとおり、私達は2006年に釣獲したセボシタビラ7個体を元親に10年以上、なんら自然界に負荷をかけることなく増養殖し観賞魚業界に供給してまいりました。
しかし、ご存知の方もおられましょうが、今年の2月10日より絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律にて国内希少野生動植物種に指定され一切の流通を禁止されてしまうことになりました。(以降、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律は種の保存法、国内希少野生動植物種は国内種、特定第一種国内希少野生動植物種は特定第一種と略します。)

今回ヤフーオークションに出品しましたのは、私たちの実績やこれまでの経過の紹介をしつつ、十年余にわたる累代飼育、増養殖の成果であるセボシタビラそのものを出品することにより、養殖販売が可能な特定第一種を選択することなく、いきなり国内種に指定するという行為自体が非常に乱暴で、結果としてあまりにも残念であることを、これまでの環境省とのやりとりも交えなるべく多くの方に周知して頂くのと同時に、広く世間一般に対してもこの一方的な権力の行使を告発していきたいとの希望からでございます。

私達はこれまでHPやブログSNS等でも繰り返し言ってきたのですが、減りゆく日本の魚たちをただ見ているだけという状況に耐えられず、中山間地や休耕田を利用し逸出がない土池やタタキ池をつくり、その中で希少な生き物を養殖して少しでも減少に歯止めをかけようとしてまいりました。その中で多くの観賞魚、海外であれば例えばアジアアロワナ、ネオケラトドゥス、カージナルテトラのように、国内であればゼニタナゴのように、天然採集から養殖へと移行する流れをつくると同時に、乱獲を少しでも減らそうとの思いもありました。
小売を熱心にやっていた時には「減っている野生の生息地で捕るのは憚れるので養殖のもので」という趣旨のお客様の声は非常に多く、乱獲の抑制に一役買っていたことは、一生懸命殖やしてきたセボシタビラの数だけあったのではないかと思います。
また、私が知る限り観賞魚業界内においては現時点で完全に養殖物に切り替わっており、養殖物の流通が可能である特定第一種という選択肢を捨て去り国内種の指定に拘ることで、多くの愛好家からセボシタビラを飼育するという夢を奪うばかりか、生息地の保全に対しても大きいリスクが生じるものと容易に推測できます。

少し過去の話になりますが、H28年には私は環境省から「種の保存法」の改正のあり方についての検討の一環として、「観賞魚市場の中での在来希少淡水魚の現状について」のヒアリングを受けております。この中で「セボシタビラについては、もはやまとまった数が野外から採集することが出来ず、すでに市場では養殖物に切り替わっている」と報告しております。
また「観賞魚業界や愛好家が希少魚類の保全に果たす役割」についても
「養殖業者や個人の愛好家が希少淡水魚を繁殖させることは、野外で個体が絶滅した時の域外保全としての機能を持つと考えている。さらにそれらの個体が市場に流通することで野外からの乱獲を防ぐことが期待出来る。希少種に対して何らかの規制は必要と考えるが、こうした観賞魚業界や愛好家が希少魚類の保全に果たす役割が機能するような制度設計を検討して貰えればありがたい。養殖も含めた生息域外保全を考え場合、最終的な目標をどこに置くのか、出口戦略を考える必要がある。養殖した個体をいたずらに放流することもできない。」と締めています。
つまり環境省はこのことをすべて承知の上で、セボシタビラの国内種指定に踏み切ったことになります。また今回のパブリックコメントにて、特定第一種の指定条件である「商業的に個体の繁殖をさせることが可能であること 」を満たしているにもかかわらず国内種に指定したこと、についての明確な回答はありませんでした。我々の十年以上にわたるセボシタビラの増養殖の実績をすべて無かったことにしてまで、皆がセボシタビラを手元で眺める幸せを消し去ってまで、そして多くの有識者の意見を無視してまで、国内種にするメリットがあるのでしょうか?適切な判断力が欠如していると言わざるを得ません。

もう一つ言いたいことは、今回国内種の指定を決めた環境省の役人やこの指定に賛成の方は、いったい今までセボシタビラのために何をやってきたのか?ということです。我々は年々減っていくセボシタビラのために住む場所を提供し、池を掘り、暑い日も寒い日も10年以上管理してきました。産卵期などは他の魚の採卵作業などで十分な睡眠もとれません。また池の補修や害獣対策、除草だけでも大変な労力です。それでも、大切なセボシタビラのために、毎年楽しみにしてくれるお客様のために汗水垂らして頑張ってきたのです。そんなささやかな労働の自由を侵害するあなた方はいったい今までどこでなにをしていたのか?どんな滅茶苦茶な判断をしても責任をとることもない安全地帯で、いったいあなた達はどこで何をしていたのですか?と私は問いたい。
またこの件に関しまして、恐らく養殖物が出回っていたおかげでほとんどなかった商業的な大量捕獲を、まるであるかのように言うだけにとどまらず、我々がさも天然採集の個体を養殖と偽って販売したことがあると受けとられかねないような発言をする自然保護、環境保全系の方達もツイッター上にて確認しております。放流禁止の啓発も私達は環境省含めどの団体よりやっていると思いますが、こと今回のセボシタビラの養殖に限り放流のリスクを挙げてくるあたりもとても卑怯な印象を受けます。正直二重苦三重苦で気持ちが滅入ります。

しかしこのような状況の中、この件に関しては魚類の学者さんをはじめとして多くの有識者の方達も味方をしてくれております。お立場もあるはずなのに、そのようなお気持ちにとてもありがたく感謝しております。また現時点の一般愛好家のご意見など聞いておりましても養殖物解禁への声は大きく、私がこのあと腰を低くして丁重に環境省様にお伺いをたて、友好的に頼みつづければ、何年後かには特定第一種に移行してもらえるのではないか、と思うこともあります。

ですが、すみません。今はそれはどうしても出来ません。

今はヒアリングの内容を完全に無かったことにされ、10年以上にわたるセボシタビラ増養殖の実績を踏みにじられ、まるで乱獲に加担してきたかのような言いがかりまでつけられている状態です。セボシタビラのために何の努力もしてこなかった人間がセボシタビラのために命さえ削ってきた人間のささやかな労働の権利を、いとも簡単に取り上げてお詫びの言葉一つかけることなく、自分達の正当性をパブリックコメントの回答を通してのうのうと主張している有様です。
ここでまたそんな人たちに頭を下げるという行為は、あまり論理的でない言い方になりますが、何か大切なものを失ってしまうように感じます。

人の尊厳を失ってまで私はセボシタビラを販売したくない。養殖業者である前に、一企業の責任者である前に、誇りを失わない一個の人間でありたい。

だから今回私は今後訴訟などを通して、この「特定第一種ではなく国内種にした責任」を広く国民に問うていきたいと思ってます。徹底的に戦いたい。そう思ってます。ご容赦ください。

なお、こちらの売り上げについては、今後行われるであろう裁判費用に全額充てたいと考えております。セボシタビラを種の保存法の国内種という狭い檻より解放し、特定第一種というより大きな器にて広く国民に愛される形にしていくため、どうか皆さま引き続き応援のほう、よろしくお願いいたします。
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この記事へのコメント

たんたん
2020年02月03日 06:35
こんにちは。
時々、美しい写真を拝見しております。また、長年にわたる保全へのご尽力には、本当に頭が下がります。真似できません。
それはそれとして一つお尋ねですが、域外保全は閉鎖的な環境でよほど慎重にしないと、同属亜種の自然分布域で交雑する可能性があり危険ではありませんか?
流通させるとなると、そこをよく理解していない愛好家から自然界に広がる恐れもあるのではないでしょうか。。
にんげん(ドブ男)
2020年02月04日 10:52
>たんたんさん
はじめましてokfish中村です。
>
>こんにちは。
>時々、美しい写真を拝見しております。また、長年にわたる保全へのご尽力には、本当に頭が下がります。真似できません。
実のところ写真一つにも、自分で言うのは恥ずかしいですが大変な苦労がございます。夏場の草刈り一つとっても魚もそうですが人間が死なないようにするのも一苦労という感じになってきました。今年も気合を入れて頑張ります。応援よろしくお願いします。

>それはそれとして一つお尋ねですが、域外保全は閉鎖的な環境でよほど慎重にしないと、同属亜種の自然分布域で交雑する可能性があり危険ではありませんか?

仰るとおり閉鎖的な環境で慎重にやっております。ご心配ありがとうございます。また交雑問題は私はセボシタビラに限った問題ではなく完全に放流問題だと認識しておりますので、法で放流を禁止する、義務教育で放流は良くないと叩き込む、という事を普段から提案するだけでなく環境省の方にも意見しております。とは言え、こちらも完全に無視されてしまっておりますが。

>流通させるとなると、そこをよく理解していない愛好家から自然界に広がる恐れもあるのではないでしょうか。。

とのことですが、よく理解してない愛好家は「流通」だけでなく「飼育」もしていると思います。すなわち「日本淡水魚を飼う」という行為に対してご懸念があるという認識でよろしいのでしょうか?それともセボシタビラに限った話なのでしょうか?
私は放流問題としてきちんと対処するのが先決だと思います。
ツイッター上では故意かは知りませんが、こちらを混同してセボシタビラの養殖封じをしてくる方もおられ大変残念に思っております。
すでにお読みいただいているとおもいますが、一応ブログの一文を貼ります。
「放流禁止の啓発も私達は環境省含めどの団体よりやっていると思いますが、こと今回のセボシタビラの養殖に限り放流のリスクを挙げてくるあたりもとても卑怯な印象を受けます。正直二重苦三重苦で気持ちが滅入ります。」

私のたんたんさまのコメントに対する回答は以上です。
Morit
2020年03月01日 13:49
はじめまして、Moritです。セボシタビラの一件、本当に残念です。アジアアロワナのように養殖魚の売買は認めるべきで、このように情熱を注いで繁殖活動を行って下さる方に水を指すような決定で何もわかっていない役人が決めたのが目に見えます。養殖魚を展開することの意義はとても大きく、繁殖させ、絶滅を防ぐという意味でも大変有効だと思います。アジアアロワナのように養殖したものは販売できるようにすれば、繁殖技術も育ち、絶滅リスクを大幅に減らすことができると考えます。また、愛好家同士で交換することにより、動物園で行われているような、遺伝的に強い個体を残して行くこともできます。環境省の暴挙とも言える決定に怒りを禁じ得ません。一体何を考えているのでしょうか?訴訟など改革を心よりYELLを送ります!署名が必要な場合が出てきたら協力します!頑張って下さい!

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